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【Challenge Award受賞】“ホラーゲーム×掃除”でブランド認知を向上。花王が挑んだ異色のマーケティング施策| Gamification Award 2025

花王が2025年8月にリリースしたホラーゲーム「しずかなおそうじ」。プレイヤーは花王の掃除用品「マジックリン」などを使って掃除を進め、謎を解き明かしていきます。「しずかなおそうじ」ホラーゲーム×清掃シミュレーションというユニークなマーケティングコンテンツとして、Gamification Award 2025のChallenge Awardを受賞しました。
「しずかなおそうじ」の受賞詳細はこちら:https://gamification-lab.com/award/2025/3/


なぜ、花王の掃除製品のマーケティングに“ホラーゲーム”を採用したのでしょうか。また、どのようにゲームをブランドの認知向上や購買につなげたのでしょうか。担当の花王株式会社 ハイジーンリビングケア事業部門 ホームケア事業部 佐々木 貴悠さんに伺いました。


■ 若年層へのアプローチを模索し、「ホラーゲーム」をリリース


――まず、「しずかなおそうじ」はどのようなゲームでしょうか?

佐々木 貴悠さん(以下 佐々木):
「しずかなおそうじ」は、3D探索型ホラーアクション掃除シミュレーションゲームです。現在無料で配信されていてPCでプレイできます(配信は2026年8月までを予定)。

https://store.steampowered.com/app/3833930/_/?l=japanese


ストーリーは、家を相続することになった主人公が、宅内を清掃しながら謎を解いていくというもの。プレイヤーは宅内にひそんでいる怪物に見つからないように、隠れたり、物音を立てないように動いたりしながら清掃を進めていく必要があり、ホラーゲーム好きの方にも楽しんでいただけるような本格的なつくりになっています。清掃には花王の実際の商品「マジックリン」や「クイックル」を用いているのが特徴です。


――特にこだわったポイントはありますか?

佐々木:
こだわったのは大きく2点です。

1つは、登場する花王の商品が非常にリアルなため、掃除の疑似体験が本格的にできる点です。できるだけリアルな汚れの質感再現・使用体験ができることを目指しました。例えば、キッチンのドロッとした油汚れも、キッチンマジックリンを使ってキレイにする爽快感を疑似体験できます。


2つ目は、本格的なホラーゲームとして成立させること。花王の商品のPRという側面はありながら、本格的なホラーゲームとしてプレイしていただけるよう世界観やストーリーにこだわりました。また、配信者の目線に立ち、マルチエンディングなど実況配信を作りやすいゲーム性を意識したことで、動画配信コミュニティーにおいて予期せぬ拡散を生んだと考えております。


――そもそも、なぜマーケティングの一環として「ホラーゲーム」の制作に至ったのでしょうか?

佐々木:
当社のマーケティング課題の解決を模索する中で、ホラーゲームというアイデアにたどり着きました。もともと、デジタルネイティブな若年層に対して、テレビCMだけでは認知がとりにくくなっているという課題感があったんです。これまでも、SNSなどデジタル上でのプロモーション施策には取り組んできました。しかし、掃除用品は低関与商材であり、SNSで話題化させることには高いハードルがあります。
その解決策として、「ゲーム×実況配信×花王」というエンタテイメントを通じたマーケティング施策を展開することで、商品やブランドを一方的に押し付けるのではなく、ユーザーに楽しんでもらいながら、認知と拡散を狙えるのではないかと考えました。

その施策実現に向けて、花王のホームケア用品の様々な商品ブランド担当者やクリエイティブ制作メンバーの他、新規性のあるアプローチを追求していくため、クリエイティブスタジオのWhateverさんにも参画いただき、横断プロジェクトとしてスタートしました。


意見を交わす中で、例えば、リアルイベントを開催しSNSで拡散するといった案など、30以上のアイデアが挙がりましたが、最終的にはホラーゲームの制作を進めることとなりました。理由としては、インディーゲームを含めホラーゲームの実況配信が非常に盛り上がっており、直接ゲームをプレイしていただく方だけでなく、実況配信視聴者にまで広く商品認知を広げることができるのではないかと考えたからです。また、ホラーゲームと掃除の相性がよさそうだと感じ、参加メンバー全員一致でホラーゲームの開発を進めることとなりました。


――「掃除との相性がよい」とは、どのような点から感じたのですか?

佐々木:
まず、「汚れ」と「ホラー」という世界観がマッチしそうだと感じたんです。汚れを落として清潔にするというのが、当社の製品の基本的な機能です。ホラーゲームで描かれる淀んだ空間に、花王の商品が登場してきれいにしてくれるというイメージが、掃除用具のプロモーションとしてふさわしいと感じました。

また、ゲームの仕様検討にあたり、Whateverさんからのアドバイスとして、ホラーゲームの拡散最大化を考えた時に、実況配信の文化が盛んなので、個人で遊んで完結してしまうスマホゲーム仕様よりも、PCゲームの方が配信されやすいという知見もいただき、PCの本格的なホラーゲームという選択肢が最適だと判断しました。


――ホラーゲームというユニークな施策を実施するにあたって、社内での反対はありませんでしたか?

佐々木:
今回に関しては、プロジェクトの発足のテーマが従来の広告の延長線ではなく、新しいチャレンジを追求するというものでした。そのため、当社の決裁者もチャレンジを後押ししてくれるマインドがありました。なので大きな反対や苦労はなく、楽しんでできたという印象があります。とはいえ、施策の実施を後押しする材料・根拠として、ゲームの実況配信が若年層中心に非常に盛り上がっていることや、世間的にもインディホラーゲームが映画化されるなど注目を集めている事例も挙げながら、合意形成を図っていきました。


■ 意外性と実況拡散で、ダウンロード数は目標の7倍に


――「しずかなおそうじ」を設計するにあたって苦労した点や、意識した点はありますか?

佐々木:
最初のアイデアを出し合うフェーズには「産みの苦しみ」があったのですが、ホラーゲームにすると決めたあとは、メンバーみんなで楽しみながら作っていきました。これまで花王でやってこなかったような、ゲームというエンタテインメントを通じた施策だったからこそ、ワクワクしながらやろうというムードが広がっていた気がします。

意識した点は、ブランドイメージとの乖離を防ぐということ。ホラーゲームにはスプラッター的な表現や暴力的な表現が含まれやすい。「この内容でブランドイメージを損なわないか」という視点は常に持つようにしていました。ホラーではありつつ、なるべく暴力的な表現は避けて作り込んでいきましたね。


――先ほど「花王の商品のリアルさ」にこだわったとおっしゃっていましたが、どのようにゲーム内に反映されているのでしょうか?

佐々木:
ゲーム内において、掃除したときの気持ちよさをリアルに体験していただくことが重要だと考えました。そこで、ゲーム内で洗剤をスプレーする音も実際の商品から音取りをしていたりします。

また、ありがたいことに普及率の高い商品なので、すでにご自宅に花王の商品がある方も多いです。そうした中で、「こんな使い方があったのか」と思える、ちょっとした裏技をゲーム内で登場させました。例えば、クイックルワイパーを短くすると網戸が拭けるといったものです。まだ知られていない、便利な使い方に気づいていただくことも大事にしました。


――「しずかなおそうじ」リリース以降から現在までで、期待した成果は得られましたか?

佐々木:
想定を超える反響をいただけました。目標ダウンロード数の7倍に到達し、3200本以上の実況動画が投稿されています(2026年4月現在)。そして、推計される視聴者数は1000万人以上です。また、セールスにも成果が表れています。ゲーム内に登場する「マジックリン EXPOWER 水アカ用スプレー」という商品が、ゲームのローンチ後、販売数を約2倍に伸ばしたのです。


ブランドイメージのスコアも好調です。20~30代の若年層で「しずかなおそうじ」を知っている方には、「お掃除と言えば花王」というイメージが定着してきていると感じています。


――すばらしいですね。これだけの成果を上げられた理由を、貴社ではどのように分析していますか。

佐々木:
大きく二点あると捉えています。

一つは、「あの花王がホラーゲームをリリースした」という意外性。ホラーゲームの対極にあるような、花王がゲームを出した、という点がSNSでの大きな話題につながったと考えています。この異色のPRの打ち出し方が、拡散の起点として功を奏したと思っています。

もう一つ大きかったのは、ゲーム実況配信を通じてしっかり拡散ができたこと。弊社からPRをご依頼したのはYouTuberのガッチマンさまお一人でしたが、ゲーム実況界隈でトップの方に配信いただいたことで、一気に他の配信者の方々も自発的に取り上げてくださり、想定以上の拡散につながったと考えています。


■ ゲームはマーケティングと相性がいい


――「しずかなおそうじ」の成功をふまえて、今後もゲームを活用したプロモーションは展開していく予定ですか?

佐々木:
実は、すでにこの2月に新しいゲームをローンチしているんです。アイドルプロデュースゲーム「掃除相愛LOVE」というゲームです。人気の声優陣を起用して、声優界隈のファン層との接点を増やしていくことを狙いに開発し、一定の成果を得られました。


「しずかなおそうじ」の施策は、社内でも認知が広がっていて注目の施策になったと思います。低関与商材を多く扱う企業として、ゲームに限らず、こういったエンタテインメントを取り入れた施策は今後も大事になってくると考えています。


――若年層を狙ったマーケティング施策を模索している企業は多いと思います。その中で、ゲームを活用した施策はお勧めできますか?

佐々木:
ゲームはマーケティングと相性がいいと考えています。実況配信によって、プレイヤー以外にもどんどん認知が広がっていくという拡散性の高さが、マーケティングに最適だと感じました。

また、従来のゲームといえば、大手企業が何年もかけて開発し販売するイメージでしたが、今はインディーズゲームが広く受け入れられるようになり、多くの人に注目される可能性があります。比較的低予算でも、アイデア一つでバズを作れる可能性がある。そういった意味で、われわれのような企業もマーケティング施策の一環としてゲームの活用にチャレンジできる機会が広がっていると思います。


――最後に、ゲームを活用したマーケティング施策を検討している方に向けて、アドバイスやメッセージをお願いします。

佐々木:
実際に取り組んでみて感じたのは、自社だけでゲームを開発するのは困難ですが、現在ではノウハウを持つ会社が多数存在しているということです。デジタルマーケティング施策のオプションとして、動画制作やインフルエンサーの起用といった選択肢と同様に、ゲームもその一つとして考えても良いのではないでしょうか。それは、先ほども述べたように、ゲームという分野の専門知識がなくてもアイデア一つで勝負できるようになってきているからです。

また、プロモーションの一環としてゲームを制作する際には、「商品を押したい」という気持ちが先行し、商品の良さを強調しがちです。しかし、重視すべきなのはあくまで「ゲームとして面白いか」、あるいは「実況して面白いか」。エンタテインメントとして需要されるクオリティであることが最も大事だと思います。

その上で、ゲームの中で自然に商品がプロモートされる構造を作ることが、成功のポイントだと捉えています。マーケティングにゲームを導入する際は、ぜひその点を意識して取り組んでいただけると良いかと思います。




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本文書に記載している情報は、公開日時点のものです。

■ Gamification Award 2026 について

『Gamification Award』は、ゲーミフィケーションを活用した優れた取り組みを行った企業・団体を表彰する年間アワードです。第2回となる今回は、2025年10月〜2026年6月に実施・発信された取り組みに加え、公募(エントリー制)によって寄せられた事例も対象とします。集まった取り組みの中から、審査委員が総合的に評価し、4つの視点において卓越した活用実績を示した取り組みを表彰します。

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