発表

【Future Award受賞】チームみらいのアクションボードの設計思想に学ぶゲーミフィケーション| Gamification Award 2025

2025年に設立された政党であるチームみらい。そのチームみらいを応援する人たちが集い、楽しみながら政治参加できるプラットフォームが「アクションボード」です。アクションの可視化やランキング、バッジ機能を通じて、全国のサポーターたちの政治参加のハードルを下げることを目的として提供されています。このアクションボードは「Gamification Award 2025」にて「Future Award」を受賞。政治参加のハードルを下げ、市民との対話を促す好事例として評価されました。
「アクションボード」の受賞詳細はこちら:https://gamification-lab.com/award/2025/2/


実質1ヵ月弱で開発・リリースされた本プラットフォームは、どのようなプロセスで作られたのでしょうか。開発をけん引した村井 謙太さんに、設計の思想や意識したポイントを伺いました。


■ きっかけは党の“人手不足”。ゲーム要素でサポーターの協力を集めた「アクションボード」


――まずは「アクションボード」の概要をお教えください。


村井 謙太さん(以下 村井):アクションボードは、チームみらいを応援するサポーターの皆さんが集い、楽しみながら政治参加できるプラットフォームです。2025年7月の参議院選挙に向けて、同年6月に一般公開しました。アクションの可視化やランキング、バッジ機能といったゲーム的な要素を通じて、全国のサポーターの方々の政治参加のハードルを下げることを目的に提供しています。

https://action.team-mir.ai/



――村井さんはどのようなお立場で「アクションボード」の開発に携わったのでしょうか?

村井:
最初は、友人を通して声をかけてもらいました。 私はもともと「Progate(プロゲート)」というプログラミング学習サービスを大学生の時に開発。その後、現在の会社、株式会社Anycloud(エニークラウド)を起業し、受託開発やコンサルの事業を展開してきました。

チームみらいにおけるシステム開発は、当時からボランティア中心で進められていましたが、常に人手が足りない状況でした。そのため、徐々に本格的に関わっていきたいと思うようになりました。そのタイミングで党首の安野からアクションボードのもととなるアイデアが出てきたんです。私は、Progateでゲーミフィケーションの考え方を用いたサービスづくりを長年やってきたので、その知見をもとに意見交換をしました。そのうちに安野から「PM(プロジェクトマネジメント)できますか?」と打診されて、本格的にジョインする形となりました。


――本施策に取り組む背景にあった課題や、その解決手段として「アクションボード」を実施するに至った経緯を教えてください。

村井:
当時の私たちは、文字通り「課題だらけ」の状態でした。政党を立ち上げたばかりで、サポーターをゼロから集める必要があり、お金も党員も、ポスターを貼ってくれる人もいないという状況でした。「5月に設立したばかりの政党が、7月の参議院選挙で本当に当選できるのか」というのが、最大の課題でした。

何が功を奏するか分からない中で、あらゆる手を尽くそうという考えのもと、生まれた施策の一つが「アクションボード」でした。人手が足りないという問題は、一部の人間が努力するだけでは解決できません。そして、関係者やサポーターの方々全員が、自律的に動いてくれる必要がありました。


実は、政党を立ち上げる以前に、安野が都知事選に出馬した際にも、ポスター貼りの作業を分担するために「ポスターマップ」というツールを開発していました。しかし、単に活動を可視化するだけではなく、よりサポーターの皆さんが「楽しい」と感じ、参加を継続できるような体験を作っていきたいと考えました。

そこで、党首の安野がミッションやレベルといったゲーム的な要素を取り入れたアクションボードのベースとなる考え方を発案。私が加わって改めて要件定義を行う中で、今の「アクションボード」の方向性が定まっていきました。


――実際の開発はどのように進めましたか?また、苦労した点はありましたか。

村井:
アクションボードは、ソースコードを公開し誰でも改良できるオープンソース形式で開発しました。 ホームページを5月に公開した後、本格的に着手したのが6月。一般公開した6月中旬まで、開発期間は実質1ヵ月弱しかありませんでしたので、非常にタイトなスケジュールでした。ただ幸いなことに、当時AIエージェントの技術がかなり進化していたおかげで、生産性の高い開発が可能になりました。また、チームみらいの党内だけではなく、サポーターの中にもエンジニアが多く在籍していたため、全員で力を合わせ、何とかリリースまでこぎつけることができました。

開発は、まずサポーター向けのチャットツールで「こういうものを作りたい」というドキュメントを共有し、ミーティングで目的を説明するところからスタートしました。デザイナーもいなかったため、自分でモックアップ(デザインイメージ)を作成し、マイルストーンを切って開発を進めました。企業における開発とは異なり、参加者同士がお互いのスキルや働き方を知らない中でタスクを割り振り、進行する必要があったことは難しさの一つでした。無償でご協力いただいていたため、「皆さんやれる範囲でやってください」とお伝えし、任意での開発が進行していました。しかし結果的には、50名ほどの方が自主的に開発へ携わっていただきました。

面識のない人同士で構成された開発チームで、アクションボードを無事完成させられた最大の要因は、「方向性をキーワードで共有していたこと」だと考えています。「選挙の“お祭り感”を出せるといいよね」といったイメージを共有することで、開発に携わる皆さんが積極的に意見を出し合い、参加してくれました。とはいえ、私を含めて誰もが答えを持たない中での手探りでの開発。皆で仮説を試しながら軌道修正を繰り返していきました。


■ サポーターの競争心を煽るのではなく、あくまで応援の可視化


――「アクションボード」を公開したあとは、どのような反応・動きがありましたか。

村井:
アクションボードは公開後も改善を続けました。たとえば、「7月3日までにサポーター1万人を集める」という目標を置いていましたが、達成が難しい見込みだったので、改善策として「チームみらいの仲間を増やそう」というミッションを追加しました。これはいわゆる紹介機能で、QRコードをシェアするとポイントが溜まる仕組みです。


結果的に期日までに目標の達成には至りませんでしたが、2026年3月6日時点でサポーター数は3万2894人に到達しています。これまでのアクション数は約12万、チラシのポスティング数は約50万枚にも上ります。特にポスティングのミッションは、どれだけチラシを配れるかというシンプルな活動だったため、サポーターの方々に非常に楽しんでいただけたようです。中には1日に数千枚のチラシを配ってくださる方もいました。

また、SNS上でサポーターの方が気軽に周りの人たちに対して「アクションボードいいよ」と共有してくれるようになったことも大きな成果です。「チームみらいの政治活動に参加してくれませんか?」と直接誘うのはハードルが高いですが、アクションボードの共有は簡単です。まさに、政治参加のハードルを下げることができているのではないかと感じています。


――政治活動の参加促進に、ゲーミフィケーションを取り入れるにあたって、意識したポイントはありますか?

村井:
当初から、「射幸心を煽りすぎてはいけない」という考えはありました。「ランキングトップになった人に何か特典を授与した方がいいのでは」という議論もあったんです。 しかし、競争を掻き立てすぎるのは、チームみらいが選挙に向き合う姿勢に反するだろうと判断しました。手段が目的化してはいけない。サポーターの選挙を応援したいという気持ちから離れて、インセンティブを得ることが目的になってしまわないように、インセンティブの設計のバランスには最大限気を配りました。ある意味、インセンティブをつけすぎず、モチベートしすぎないこと。ソーシャルゲームのような中毒性を生まないように気を付けていました。

アクションボードのゲーミフィケーションは、「推し活」の活動量を見える化した、という表現がふさわしいと思います。好きなバンドの全ツアーを回った、という記録が可視化されて、シェアできるとうれしいですよね。射倖心ではなく「自己満足」につなげるのがこのアクションボードのゲーミフィケーション要素です。

特別な報酬を得られなくても、レベルやポイントが見えるだけで人は楽しい気持ちになります。これは、私が「Progate」を開発していた時に感じていたことです。「Progate」も、レベルやポイントを何かに還元することはありません。ミッションをクリアしたら画面にアニメーションが出てくるといった、シンプルなゲーミフィケーションでも十分モチベートされるんです。


■ 政治×ゲーミフィケーションの可能性について


――今回は選挙の協力体制の構築を目的にした施策でしたが、今後そのほかの分野や行政などでゲーミフィケーションが活用できる可能性について、どのようにお考えでしょうか?

村井:
チームみらいでは、「みらい議会」という、国会で今どのような法案が議論されているのか伝えるメディアプラットフォームを展開しています。このみらい議会にも、今後、ユーザーがよりサービスを活用できるようにゲーミフィケーション要素を活用してみたいと思います。たとえば、有名なニュースサイトでもゲーミフィケーションが取り入れられているんですよね。1日1回ニュースを開くとスタンプがたまったり、コメントをするとレベルが上がったりといった仕組みです。

特にゲーミフィケーションは、オンボーディングと相性がいいと思います。そのため、有権者が自分の意見を表明したり、能動的なアクションをとったりする一歩目にゲーミフィケーションを活用できるとよいのではないかと考えています。


――有権者の方々がゲーミフィケーションで政治参加の一歩を踏み出した後も、複雑な政治の仕組みに直面するなど、課題は続くのではないでしょうか?

村井:
おっしゃる通り、ゲーミフィケーションで最初のハードルをクリアした後も、より複雑な課題に直面することがあると思います。この次の壁を乗り越えるためには、やはり人とのつながり、つまりコミュニティの存在が必要不可欠になります。

アクションボードでの活動を一人で継続するのは難しいため、活動を通じて仲間を見つけてもらうことが重要です。たとえば、SNSでユーザーをフォローしたり、友人と意見交換をしたりといった形で、仲間を広げていくことを想定しています。アクションボードをきっかけにコミュニティへ参加し、人々と関わりながら政治活動がライフスタイルに溶け込んでいく。そして最終的には、アクションボードが単なる可視化の補助的な役割となるのが理想です。


――最後に、ゲーミフィケーションを取り入れて社会を良くしたい、もっと多くの人を巻き込みたいと考えている人たちに向けて、メッセージやアドバイスをお願いします。

村井:
私はゲーミフィケーションをしっかり学んだわけではありません。「Progate」を開発する中で「とっつきにくいプログラミング学習のハードルをいかに下げ、楽しんでもらうか」という視点で工夫した結果、ゲーミフィケーション的な体験設計にたどり着きました。


前回のGamification Awardを受賞された方々も、本当にすばらしいプロダクトを作られていますが、皆さん、ゲーミフィケーションという「手段」以前に「想い」を持っていますよね。たとえば、掃除のモチベ-ションがわかない、子どもが宿題をやってくれないといった「挫折」の原体験が、ゲーミフィケーションを取り入れる背景にあるはずです。挫折しそうな人も適切な伴走があれば、恐れずに取り組めます。ゲーミフィケーションの仕組みは、その伴走の代理を務めてくれるもの。つまり、「やってみたらそんなに大変なことではないけれど、最初のハードルが大きい」という取り組みにこそ、ゲーミフィケーションが効果を発揮すると考えています。

ただし、「ゲーミフィケーションを使ってユーザー数を増やしたい」と数字ばかり見てしまうと、人間に寄り添わない体験になってしまうおそれがあります。アクションボードはサポーターの方を応援したいというピュアな気持ちに寄り添ったことで、真価を発揮できたと思います。これからゲーミフィケーションを活用する方々も、ぜひ使う人の「リアルな体験」を大事にしてほしいです。




記載されている会社名、製品名は、各社の登録商標または商標です。
本文書に記載している情報は、公開日時点のものです。

■ Gamification Award 2026 について

『Gamification Award』は、ゲーミフィケーションを活用した優れた取り組みを行った企業・団体を表彰する年間アワードです。第2回となる今回は、2025年10月〜2026年6月に実施・発信された取り組みに加え、公募(エントリー制)によって寄せられた事例も対象とします。集まった取り組みの中から、審査委員が総合的に評価し、4つの視点において卓越した活用実績を示した取り組みを表彰します。

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